タマムシ
2023 7 27 (art23-0566)
エアコンの室外機のドレンホースからの水が、堅い地面に落下し、ちょっとした水溜まりをつくっています。その中に甲虫が仰向けにひっくり返っていました。翅が水に浸り、もがくように足を動かしていますが、空を切るばかりで、どうすることもできないようです。どのような状況で、こうなったのか、ちょっと不思議です。足を動かす度に体が動き、背中の翅の縁が見え隠れします。光沢のあるきれいな色です。どうやら、タマムシのようです。指を近づけると、足をからんできましたから、そのまま移動して、指を庭木のマメツゲの小葉に重ねると、ゆっくり離れていきました。緑色の金属様光沢が鮮やかです。胸部と上翅に赤っぽい帯が走っています。家内と田舎に移住して6年目になりますが、タマムシを見たのは初めてです。
タマムシの金属光沢は、翅の構造によるものです。薄い膜が何層にもなっている翅に光があたると、光は各層で反射し干渉し合って特定の色だけが強くなり、緑や赤の色を作り出します。構造色と言います。色素による色ではないので、翅の構造が壊れないかぎり、光があたると色を発します。個体が死んでも、翅の色はあせることがありません。また、光の具合で色が変わります。そのため、装身具に加工されたり、収納箱の装飾に使われています。後者で、有名な箱は、法隆寺の大宝蔵院に安置されている「玉虫厨子」です。厨子は収納具、大切なものを入れる箱、のことです。
凡夫の記憶では、厨子(箱)の4面にタマムシの翅が横一列に並んで張り付けてある箱です。ところが、今回、調べてみると、透かし彫りの金具の下にタマムシの翅が挟んであるとあります。どこで、どうして、記憶違いをしたものかわかりません。横一列にタマムシの翅がならんでいる厨子の画像を見た記憶があります。
この法隆寺の「玉虫厨子」、実際のものは、透かし彫りの金具内に挟まれていたタマムシの翅はほとんど無くなっているそうです。かろうじて、端っこの2個所に残っているのみとか。
ただ、復元品が2基製作されているそうですから、「玉虫厨子」がどのようなものであったのか、そして、タマムシの翅がどのように使われているのか、知ることができます。復元品の一つは、法隆寺の大宝蔵殿(大宝蔵院とは異なる建物)、もう一つは大阪の高島屋史料館に展示されているそうです。