今日も、"ようこそ"      

今日も、"ようこそ"

定年退職後、横浜市から湯梨浜町(鳥取県)に転居しました。 ここには、両親が建てた古い家が残っています。 徒歩5分で東郷池, 自転車15分で日本海です。 また、はわい温泉の温水が各家庭まで届き、自宅温泉を楽しめます。 ブログでも始めようかと、HPを立ち上げました。最近始めた木工工作と古くなった家のリフォームの様子を、田舎の日常に織り交ぜながら、お伝え出来ればと思います。

本「ハローワールド」

2019 07 12 (art19-0152)
このところ、木工作業をやっていません。理由は数日続いたトリマーを用いた加工作業後に、顔と首に皮膚炎が発症したためです。状況からみて、木材の削りカスを大量に浴びましたので接触性皮膚炎と自己診断しています。少しよくなったので作業を再開したところ悪化しました。感作されて高感受性になっているようです。その後、一進一退を繰り返しています。落ち着くとよいのですが、困ったものです。

今は、木工作業に当てていた時間は、もっぱら読書に使っています。以前読んだ本を本棚から取り出して読んでいます。ここの本棚には、何度も読むことになりそうな本を並べています。

古本に混じって、とある最近刊の本を読みました。藤井太洋著の「ハローワールド」です。昨年講談社から出版された本です。著者は IT 業界に精通しているようで、フィクションではありますが、IT ワールドでうごめいている人の行動様式が窺えました。

「ハローワールド」は5編からなる連作短編集です。“インターネットの自由” がメインテーマのようです。その中の一つ、『巨像の肩に乗って』をあらすじで紹介します。ツイッターが中国でも使えるようになったこと(これは、運営会社が中国政府へユーザー情報を提供することを意味するとか)に衝撃を受けたインターネットの自由主義者の “何でも屋” が、同調者と共に、対抗策を模索する。GitHubに公開されているマストドン(ドイツのプログラマーのEugen Rochkoが開発したSNS用フリーソフト。誰でもサーバーを立ててユーザーを招いて実際に稼働することができる)のソースコードを改造し、秘匿化通信に変えることで盗聴や検閲されることなく自由に使えるSNSオクスペッカーをたちあげる。更に、何らかの監視や制限・干渉がかかったときには、別のインスタンスに移植するか新規のインスタンスを立ち上げる機能を組み込んだ。また、ユーザー認証にビットコインのブロックチェーンを用いた。このSNSを公開するや、マストドンインスタンスがオクスペッかーに移行し、ユーザー数が数万を超えた。オクスペッカーに変更されたインスタンスの多くは通信が監視されてきた中国、ロシア、イスラエル、ベネズエラのもの。人々は、監視や検閲のない自由な SNS を希求している。喜びもつかの間、オクスペッカ-に日本政府から圧力がかかる。難を避けて、“何でも屋” はベトナムに逃れ、そこからオクスペッカーをサポートする。実際にありそうな話しです。

ネット検閲は、どこの国でもやっていることだと思います。騒々しいUSAはもとより日本でも。個人的には、気持ちの良いものではありません。しかし、検閲されてこまるようなこともありません。そう言えるのは、今の日本が泰平であるからでしょう。懸念すべきは、思想・言論統制や行動監視が必要以上に行われる事態が到来した時、インターネットの自由を誰が守るかです。この小説のように “何でも屋” とそれに無償で力を貸す IT オタクが出現することを願うばかりです。そして、地球のどこかにその種の人が沢山いてくれることあれかしと思います。

それにしても、IT 業界のプロフェショナルの仕事感覚はかなり特殊かもしれません。ソフトウェアの開発プロジェクトに参加しているだけで、それがどこの会社のものかは問わない。会社指向ではなくプロジェクト指向型といえそうです。PC 端末と頭があればどこからでも仲間入りできるのですから納得できます。次から次へと参加するプロジェクトを変えていく(=転職する)。そうすることで、キャリアを積むのでしょう。所属する会社名より、参画したプロジェクトが問われる世界です。面白いでしょうが、反面、厳しい世界です。
 
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