今日も、"ようこそ"      

今日も、"ようこそ"

定年退職後、横浜市から湯梨浜町(鳥取県)に転居しました。 ここには、両親が建てた古い家が残っています。 徒歩5分で東郷池, 自転車15分で日本海です。 また、はわい温泉の温水が各家庭まで届き、自宅温泉を楽しめます。 ブログでも始めようかと、HPを立ち上げました。最近始めた木工工作と古くなった家のリフォームの様子を、田舎の日常に織り交ぜながら、お伝え出来ればと思います。

エアコンの交換から稲作の今を知る

2020 04 27 (art20-0232)
内廊下の北側中央の畳部屋で家内と寝起きしています。かつて、この部屋に置かれたベットに、晩年の祖母が、父が、そして、母が伏せていました。祖母の面倒を母が、父の面倒を母が、母の面倒を姉と家内がみていました。凡夫らは横浜に住んでいましたから、近くに住む姉と交代で母の面倒をみるために、家内は何度も一人で横浜からここへ来ていました。

先日、その部屋のエアコンが動かなくなりました。新しいエアコンに交換するため地元の電気店のAさんに来て頂きました。Aさんの話では、このエアコンは、祖母が生きていた時に取り付けたものだそうです。30年以上も動いていたことになります。祖母、父母、そして我々の3世代に渡って世話になったエアコンです。“ご苦労さんでした” と声を掛けたくなります。

Aさんは、電気店を経営しながら、稲作もやっているそうです。エアコンの取り付が終わった後、少し話を聞かせて頂きましたが、その中で “おや” と思うことがありました。そろそろ種籾を撒いて田植え用の苗を育てる準備に取り掛かるそうです。その種籾は、自分で用意するのではなく、農協から購入すると言います。理由を尋ねると、農協から購入しないと作った米を農協に出荷できないとのことでした。また、農薬や肥料の散布等の栽培作業を全て記録し農協へ提出するとも。要は、農協の指示に従って稲を栽培し、指示通りに行っているかどうかの検査をうけるといった按配です。指示の内容は、いついつこれこれの農薬をこれこれだけ散布する、肥料を施すといった農作業だけでなく、使用する農薬や肥料の指定も含まれています。それらの農薬や肥料は農協が販売するものです。大変な世界です。大変でも儲かればよいのでしょうが、もうかるどころか、赤字になる、とも言っていました。とすれば、農協を潤すために稲作をおこなっているようなものとも言えそうです。大変な世界ではなく、変な世界です。もっとも、この構図は今に始まったものではありません。

定年退職後ここで生活をはじめた時「稲作は簡単だから、作ってみないか」との誘いを何度か受けました。“簡単”の意味がわかりませんでした。しかし、Aさんの話を聞いてわかりました。稲作は、田おこしに始まり、苗代の準備-播種と育苗、本田の整地と代かき-田植え、収穫、そして土づくりに終わりますが、その間、水の管理と栽培管理(雑草防除、病害虫防除)が継続します。複雑にみえますが、これらの作業はパターン化していて、年間スケジュールに組み込まれています。そのなかで、やっかいなのは栽培管理でしょうが、これは農協の指示に従って行うのであれば、個々の農家がアレコレ考える必要はなさそうです。作業にともなう肉体的なきつさはあるでしょうが、指示に従って行うだけですから楽と言えば楽です。そうです、ある意味、“稲作は簡単” です。かくして、誰が作っても、同質な米ができるのでしょう。”うちの米は、これこれをやったから、よその米より旨いとか、収量が多いとか” と言ったことは今の稲作にはなさそうです。

Aさんは、こうも言っていました「米は作っているけど、野菜作りはできないからやっていない」と。米作りは作業がパターン化しているため週に1,2度(あるいは週末だけ)田圃に出て作業すればこなせるのですが、野菜作りはそうはいかないことにあるようです。特に自家用の野菜作りは、できるだけ農薬を使いたくありませんから、病気や虫の発生に気を使います。毎日、畑に出て様子を見る必要があります。異常を見つけたら、原因を特定し早急に対処しなければなりません。このこと、2年間の野菜作りで学習しました。

集落の東側は東郷池で、西側は田圃が広がっています。農業に従事している人は少なくなったと聞いていますが、先祖から受け継いだ田圃を放っておく人はいないようです。草ぼうぼうの田圃は見あたりません。一区画内の田圃をのぞき、毎年稲が栽培されています。一区画の田圃は転作作物の大豆用です。自分の田圃を管理できなくなった多くの住民は、誰かに田圃をあずけ、稲や大豆を作ってもらいます。その誰かとは、区の農事実行組合や個人です。農事実行組合は区の有志が組織した組合で、田圃の管理と耕作を一手に引き受けています。我が家の田圃は、生前の母がそうしていたように、一部を個人にあずけ、残りを組合に委託しています。今も、我が家の田圃でとれた米を食べています。かつては、田圃の貸し賃として自家消費量分の米を貰っていたのですが、今では、お金を出して自家用の米を手に入れています。

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