今日も、"ようこそ"      

今日も、"ようこそ"

定年退職後、横浜市から湯梨浜町(鳥取県)に転居しました。 ここには、両親が建てた古い家が残っています。 徒歩5分で東郷池, 自転車15分で日本海です。 また、はわい温泉の温水が各家庭まで届き、自宅温泉を楽しめます。 ブログでも始めようかと、HPを立ち上げました。最近始めた木工工作と古くなった家のリフォームの様子を、田舎の日常に織り交ぜながら、お伝え出来ればと思います。

本「病の世紀」

2020 05 11 (art20-0236)
新型コロナウイルス感染騒ぎで遠出もままならず、この数ヶ月、もっぱら、近場の湖畔公園と畑へ出かけています。いずれも、歩いて5分もかからず、外出の感覚はなく、庭の延長といったところです。それでも、庭では見られない野菜・果樹や水鳥を眺めるのはそれなりに心が和みます。 畑には先日家内と植えた夏野菜の苗が育ち、傍らのプルーンの木には沢山の幼果がふくらんでいます。と言っても、毎日見ている目には、その変化が見て取れませんが。ただ、時折、大きくなったことに気づきますから面白いものです。湖畔公園の湖岸に沿って設けられた遊歩道に足を向けると、気配を察してか、護岸の堤で休んでいる水鳥が一斉に飛び立ちます。突然の羽ばたきの音に驚き、そこに水鳥がいたことを知ります。

昨年末に、ちょっとした不摂生から肺血栓塞栓症で入院しました。幸い、退院後、服薬を続けることで、どうにか畑仕事や木工作業ができるまでになったのですが、当初は、肺のガス交換機能が低下し、呼吸困難に陥り、呼吸ができない苦しさに怯えていました。ICUのベットに横たわり、かろうじて生きている状態でした。あの苦痛は二度と味わいたくないと強く思います。
新型コロナウイルスはウイルス性肺炎を引き起こします。多数の無症状や軽症患者の回復の陰で、少数の重症患者が死んでいます。死者は語ることはありませんが、肺機能が損傷し、呼吸ができない苦しさを、死ぬ寸前まで、あるいは、意識を失う寸前まで、感じていたことでしょう。その苦しさは経験したことのない人には分かりようのない苦しみとか。はからずも、凡夫は、肺血栓塞栓症の病気体験から、いくらか分かるような気がします。

療養中の身であれば、新型コロナウイルスの感染を避けたいものです。ウイルスは飛沫や接触によって人から人へ感染すると言われています。外出時にはマスクを着用することが半ば習慣になりました。癌や糖尿病などの多くの病気は人から人へ感染することはありませんが、ウイルスは人から人へ感染し、肺炎を引き起こします。

ところで、感染症が犯罪を引き起こすことはあり得るのでしょうか。感染による肉体的疾患を苦にして罪を犯すことはあり得ると思いますが、感染自体が、人をして犯行に向かわせることはあるのでしょうか。そのような犯罪は成立するのでしょうか。
牧野修著の小説「病の世紀」(徳間書店)を読みました。いつか読もうと古本屋で購入した古本で、2000年の出版です。先日何気なく手に取り読んでみました。テーマは ”悪意に操作された感染する犯罪” です。ウイルスや微生物に感染した人が、犯罪を引き起こすという設定です。おや?と思う箇所が多々ありますが、登場する架空の感染症はとてもユニークです。

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[炎上疥癬菌] カビの一種で、これに感染した人は自然発火する。自爆するので周囲を巻き込む。
[リーライト・ユズナ症候群] R2ウイルスの感染による。右脳にダメージを受け、パラノイア的妄想にとりつかれる。空に輝く光の幻覚は神となりオカルト的思考に走る。神のお告げに従い救世的世直しを実践する。
[突発性多舌歯症] クチマネと呼ばれる5mmほどの蛆虫による。感染すると味覚に異常が生じ、食べ物の味がよくなる。舌が増えると格段によくなる。何でも食べたがるが行き着くところは人肉。
[山羊の仔症候群] ウイルスによる。脳障害によって理性と情動のリンクが機能しない。倫理観を喪失し、暴力的な衝動を抑制できない。他者とのコミュニケーション不全を特徴とする。

炎上疥癬菌とクチマネによる感染症はグロテスクなので、ホラー趣味人にはよいでしょうが、かなり不自然です。しかし、ウイルス感染によるリーライト・ユズナと山羊の仔は、脳の機能障害を介して起こる精神疾患ですから、ある意味、現実的です。実際、ウイルス、細菌、カビなどの感染症が脳の機能障害を引き起こすことは良く知られています。小説はフィクションですが、今後、犯罪脳の研究が進めば、感染症が引き起こす犯罪と考えられる事例が発見されるかも、などと妄想?しています。

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