本「新型コロナウイルスの真実」
2020 10 22 (art20-0283)
このところ、本はアマゾン通販で購入していましたが、先日久しぶりに本屋(今井書店倉吉店)に行きました。今井書店は、山陰地方で最大規模の書店グループで、27店舗を鳥取県と島根県で展開しているそうです。50年程前になりますが、高専生の時によく米子市内の今井書店を利用していました。当時の本屋は、市内のアーケード商店街の一画にあり、縦長の店舗だったと記憶しています。県中部の倉吉市内には、現在、2店舗、倉吉郵便局前とパープルタウン内にあります。
本屋のよいところは、実際に本を手に取って中身を読むことができることです。陳列棚に並んだ本のタイトルを見ていると、中身を覗きたくなる本がチラホラ目に留まります。そんな本を手に取ってパラパラとページをめくり、所々読んでみることは、本屋ならではの特典です。タイトルから想像した内容とのギャップ、そんな見当違いをも楽しむことができます。
ところで、購入してまで読もうと思える本は多くはありません。いつの頃からか、本を手にレジへ向かう前に、ちょっと待てよと、もう一度、自問するようになりました。時間をかけて読むに値するかどうか、そして、値段に見合うものかどうか、を。多くの場合、陳列棚に本を戻すことになります。
今回、久しぶりの本屋であったこともあり、数冊の本を購入しました。その一冊が岩田健太郎著の「新型コロナウイルスの真実」(ベスト新書、2020年刊)です。新書版で気軽に読める本です。岩田氏は、神戸大学大学院の感染症学の教授です。プロが書いた感染症対策の話ですから、それなりにためになります。特に、第1章の 「[コロナウイルス]って何ですか」、と、第2章の 「あなたができる感染症対策のイロハ」、は。
このところ、国内の新型コロナウイルス感染者数が一日あたり500人前後で推移しています。新型コロナウイルス感染症の拡散が抑えられている状態と言えます。新型コロナウイルスとの付き合いがうまくいっているのでしょう。この状態を維持するために、今一度、新型コロナウイルスとはどういうものかを理解し、有効な感染症対策を再確認しておくことは有益であると思います。第1章と第2章の内容はその役割を十分に果たします。
さて、凡夫がこの本で、読みたいと思った箇所は、第3章の「ダイヤモンド・プリンセスで起こっていたこと」です。岩田氏が、感染症の専門医として、感染渦中のダイヤモンド・プリンセス号に乗船したことは知っていましたので、どのような状況であったのか、専門医からみてどのような印象を受けたのか、興味がありました。
2020年1月20日に横浜港を出港したクルーズ船ダイヤモンド・プリンセス号の乗客で, 1月25日に香港で下船した80代男性が新型コロナウイルス感染症に感染していたことが2月1日に確認されました。これが最初の感染者の報告です。以降、船内の船員や乗客の中に、感染者が次々見つかり、新型コロナウイルス感染症の集団感染の発生となりました。
ダイヤモンド・プリンセス号には3,713人の乗員乗客(船員1,068人, 乗客2,645人)が乗っていましたが、712人の患者、14例の死亡が確認されたそうです。また、その他に検疫官や船会社の医師ら外部から対策に入った9人の感染が確認されたそうです。(IASR Vol. 41 p106-108: 2020年7月号より)
このようなダイヤモンド・プリンセス号での集団感染は未曽有の事例であったと言われていますが、現場の感染症対策はどのようなものであったのかの報道がすくなく、実態が不明のままでした。そんな中、岩田氏は、感染症対策の専門家として要請され、船内に入り、実状を視察することができたそうです。ただ、2時間程で、退船を与儀なくされたそうです。本では、感染症の専門医からみた、感染症対策の問題点が指摘されています。船内での2次感染を含めた感染拡大を招いたのは、感染症の素人が対策の音頭を取らざるを得なかったことにつきるようです。
やはり、新型コロナウイルスとはどういうものかの理解、特に、新型コロナウイルスが人から人へどうやって感染するのかを正しく理解した上で、適切な防御策を講ずるべきです。これは、ダイヤモンド・プリンセス号だけの話ではなく、巷の新型コロナウイルス感染症についても言えることです。