今日も、"ようこそ"      

今日も、"ようこそ"

定年退職後、横浜市から湯梨浜町(鳥取県)に転居しました。 ここには、両親が建てた古い家が残っています。 徒歩5分で東郷池, 自転車15分で日本海です。 また、はわい温泉の温水が各家庭まで届き、自宅温泉を楽しめます。 ブログでも始めようかと、HPを立ち上げました。最近始めた木工工作と古くなった家のリフォームの様子を、田舎の日常に織り交ぜながら、お伝え出来ればと思います。

定年後の生活

2020 11 26 (art20-0293)
縁側に広げた新書版の本、まだ、日干し陰干し状態にあります。カビの臭いが無くなるのを待っています。パラパラとページをめくれば消失効果が増すだろうと、気が向いた時にパラパラとやっています。そうすると、気になるタイトルの本が目に入り、パラパラを中断して本を読み返すことになり、一日の大半が終わります。

ネットで、古本のカビ臭さを解消する方法を検索してみますと、(1)重曹や消臭剤と一緒にビニール袋に入れて数日放置する、(2)新聞紙を各ページに挟んで数日放置する、の2つの方法が紹介されています。両方とも手間がかかり何十冊もの本を処理できませんので、却下です。で、縁側での日干し陰干しとなり、パラパラとページをめくることになります。

292-2_flowerB_20201026

そうして読み返した本の一冊として、前回のブログで、加藤仁著の「定年後 --豊かに生きるための知恵--」(岩波新書、2007年刊)を取り上げました。この本では、活動的で外との関わりをもっている人、所謂、定年後も定年前のように輝いている人を、アレコレ具体例で紹介しています。家中で、一人のんびりと何をするでもなく一日を過ごしているような人は入っていません。
今回は、定年後を過ごしている一人として、思うことをちょっと付記します。

凡夫は、39歳で製薬会社の研究所に中途入所し、20年間働いて60歳で定年退職しました。退職時に「Kさんは好きなことをして会社を終えた」とか「会社の一番良い時に勤めてラッキーだった」と、何人かの人から言われました。確かに、自分でも、好きなことを好きなようにやっていたと思います。また、それが許容される雰囲気が研究所にはありました。研究所に入所する前は、大学を含むいくつかの研究施設を転々とし研究生活を続けていました。そこでも、好きなことを好きなようにやっていました。
そして、定年後の今の生活があります。家庭菜園や木工工作、そして読書を主体とした生活です。

畑仕事や木工作業をしながら感ずるのは、開放感と自在感です。解き放たれて自分の思うとおりにできる感覚です。この感覚は、定年退職後に初めて感じたものです。これまで、いろいろな所で、好きなことを好きなようにやってきたと思っていましたが、この感覚とは無縁でした。

凡夫にとって定年前と後の最大の変化は、お金/生活費の出処です。給料から年金への移行です。稼ぐための労働の有りと無しです。好きなようにやれる研究といえども、労働であることに変わりはありません。有用な成果を出して、その分の報酬を受け取ります。研究の場合の成果とは、発見や発明であり、論文を書くことです。有用とは、報酬を与える側にとって利用価値があることです。
給料生活者から年金生活者となり、労働から解放されました。周りの評価を得るため、報酬を得るために何かをする必要は無くなりました。だれに気兼ねをすることもなく、やりたいことをやりたいように、思うとおりにできます。もっとも、体と頭が老化していますから、実際には思ったとおりにできないこともあるのですが、それでも、開放感と自在感はあります。

解放感と自在感を感じられる生活は、悪くない、否、豊かな生活だと思っています。物があることの豊かさではなく、心が平穏で自由であることの豊かさです。凡夫の場合、この豊かさは、退職し年金で暮らす身分?になって、実現しました。
定年後、家の中で、1人のんびりと何をするでもなく過ごし、時折、庭に出て松の小枝や針葉を剪定ばさみで切り取っている人も、あるいは、縁側に碁盤を持ち出し白黒の石をならべている人も、豊かに生きていると思います。

292-2_flowerB_20201026
   


 【戻る】