本「スマホ脳」(その2)
2020 12 17 (art20-0299)
雪が降りました。それも、大雪で、一晩で結構積もりました。スコップを持ち出し、雪かきに精を出しました。寒さも半端でなく、暖房の効いた部屋に閉じこもっています。ガラス窓からの冷気を防ぐため、厚手のカーテンを追加しました。さて、前回に続いて、スマホの話です。
多くの人がスマホを手元に置いて、四六時中ちょこちょこ見たり弄ったりしているようですが、この種の行為の心身への影響、特に子供や若い人への影響が気になります。ところで、8月10日は “かっぱえびせんの日” だそうです。やめられないとまらないです。この歳になっても、時々、カルビーのかっぱえびせんが食べたくなり、買い出しに出かける家内に一袋頼みます。そして、菓子皿に盛って、家内と競うようにバリバリ食べます。かっぱえびせんの場合は、一袋食べると満足してもういいやとなります。しかし、スマホの場合は、もうやめとこうとはならず、本当に、“やめられないとまらない” 状態になるそうです。
スマホには、報酬系を活性化させて、スマホづけにするという “特技” があります。スマホを見たり弄りたいという衝動を制御する能力があれば問題はないのですが、いかんせん、子供や若い人にはこの制御能力が未発達だそうで、スマホの特技に抵抗できず、手が伸びてしまいます。
精神科医ハンセン氏の著書『スマホ脳』には、スマホの悪影響がいろいろ語られています。いくつか、凡夫の理解の及ぶ範囲で書き留めておきます。
何かの作業をやりながら、スマホを見たり弄ったりしていると、やっていることに集中できなくなるそうです。人は、同時に複数の作業を行います(マルチタスク)が、これは、同時に複数の作業を処理しているのではなく、作業ごとに脳領域を割り振り、作業から作業へ頻繁に切り替えることで処理しているそうです。そのため、切り替えに時間がかかり、また、切り替え前の作業に意識が残ったり(注意残余)して、それぞれの作業に集中することができなくなります。作業記憶も低下するようで、効率が上がらず、生産性が低下することになる、とか。
作業をやりながらスマホを見たり弄ることはよくないのは分かりますが、スマホづけの影響はもっと奥深いようです。集中力と記憶力に関し、面白い調査結果が紹介されています。スマホを教室の外に置いた学生とサイレントモードにしてポケットにしまった学生の記憶力と集中力を比較したところ、スマホを教室の外に置いた学生のほうが、よい成績を出したそうです。この実験報告書のタイトルは「脳は弱る、スマートフォンの存在が僅かにでもあれば、認知能力の容量が減る」だった、とか。
自制心は、報酬を先延ばしにする能力、つまり、将来もっと大きな報酬をもらうために直近の小さな報酬をもらうことを我慢する能力といえます。スマホづけになると、自制心が低下し、上達に時間のかかるようなことを学べなくなるそうです。すぐに上達しなければ止めてしまう、とか。
夜中でもスマホをいじることになると、当然、睡眠時間が短くなります。寝ている間に、記憶の固定化(短期記憶から長期記憶への移行)が行われると言われているそうで、睡眠時間の減少は記憶の固定化に支障をもたらすことになる、とか。
依存症とは、自分に害を及ぼすとわかっていても何度もくりかえしていまう症状だそうです。平均して10分に一度スマホを手に取ったり、弄っている状態は、もはやスマホ依存症と言ってよいのかもしれません。スマホを取り上げるとどうなるかを調べようとしたそうですが、実験を中断せざるを得なかったようです。その理由は、被験者の半数以上が禁断症状を示したからだ、とか。
いくつかの悪影響を書き留めてきましたが、この本には詳細なデータが添付されていませんので、影響の程度を判断することができません。学術書籍ではありませんから仕方ないのですが、ただ、都合のよい調査結果だけをざっくりと論述?したような印象を受けます。悪く言えば、週刊誌的な書き方です。多くの人は、その種のものを好みますからベストセラーになるのも肯けます。
IT企業のトップ、例えば、スティーブ・ジョブスやビル・ゲイツなどが、子供にスマホを持たせていないか、使用を制限していたことは、周知の事実ですから、スマホには何かがあるのでしょう。スマホを持ったことのない凡夫には、残念ならがら、その何かが分かりません。アップル社からiPhoneが発売されたのが2007年ですから、まだ、十数年しかたっていません。おそらく、数十年後に、その何かが誰の目にも明らかになるでしょう。悪いことでなければよいのですが。