CNCルーター(6)
2021 3 1 (art21-0320)
前回(5)、円と楕円の座標を計算し、それを基にGコードでプログラムを書き、線彫りを行いました。プログラムと言っても、(X###, Y###) のような座標を指定するコードの羅列に過ぎませんが。結果は、なかなかの出来でした。曲線の (X, Y) 座標を小刻みに指定して、回転刃を曲線にそって移動させれば、どんな曲線でも彫ることができます。その為には、座標を小刻みに定める必要があります。多角形や楕円などは、簡単な数式で表せますから、数式から座標値を求めることができます。しかし、フリーハンドで描いた線や面、自然界の線や模様などは、数式で表すことが容易ではありませんから、別の方法で、座標値を求めることになります。
ここにデジタル画像が登場します。デジタル画像は、格子状に並んだピクセル(画素)で構成されています。色情報の最小単位であるピクセルは、縦横に整然と並んでいますから、 (X, Y) 座標値を持ちます。デジタル画像は、特定のピクセルを選択し色彩や濃淡をつけることによって、像を結ばせたものです。この時、ピクセルの選択は、それぞれのピクセルに固有の (X, Y) 座標値を用いています。
こう考えると、フリーハンドで白紙に描いた、あるいは、自然界にある線や模様を、一度、デジタル画像として取り込めば、簡単に、線や模様の座標値を取り出せることになります。また、逆も真なりで、デジタル画像として描いた線や模様は座標値をもつことになります。
ここで、CAD (computer-aided design) と CAM (computer aided manufacturing) が登場します。CAD は図面や模様を描く支援ソフトウエアで、 CAM は CAD で描いた図面や模様の座標値を読み取って NC プログラムを生成するソフトウエアです。
さて、前書きはこれくらいにして、今回は、課題を「3つの楕円の線彫り」とし、 CAD で楕円を描き、 CAM に渡して、Gコードのプログラムを生成させ、楕円の座標値を検分してみました。使用したCAD は Jw-CAD。これは、清水、田中、岡野氏が開発したフリーソフトで、凡夫は木工工作の設計に使ってきました。CAM は NCVC (NC Viewer and Converter) です。こちらは、舞鶴高専の眞柄氏が開発したフリーソフトです。
3つの楕円は、(長軸、短軸)が、それぞれ、(35, 30), (30, 15), (12, 9.6)です。 Jw-CADで描いた楕円を保存し、NCVCで開きます。取り込んだ画像の NC プログラムを標準生成(設定はデフォルト)させると、画面の左縦枠に NC加工用のGコードがあらわれます。ここから、3つの楕円の (X, Y) 座標値をとりだし、隣接する2点間の距離を算出しました。
いずれの楕円とも、隣接する2点間の距離は変動しています。前回 (5)、中心角を1度づつ刻んだときの距離を数式からもとめましたところ、尖ったところが最大で、たいらなところが最小になっていましたが、今回は、逆になっています。大きく曲がる箇所では、より小刻みにとったほうが滑らかな曲線になりますから、今回の刻み方のほうが理にかなっています。3つの楕円を比べると、2つ目の楕円の距離値の変動幅が大きくなっています。これは、ΔYの変動幅が小さくなっている為ですが、それによて、ΔXとΔYの変動の相反性を乱しています。ちょっと、不自然な刻み方です。
3つの楕円とも、距離の最大は、0.5mmです。これは、NCVCプログラム生成パラメーターの一つ、直線補間公差が0.5mm(デファオルト値)となっているからです。前回、距離の最大値は0.262mmでしたから、ほぼ、倍になっています。この(X, Y)座標値でどうなるか、実際に、CNC1310ルーターを稼働させてみました。結果は、なかなの出来でした。