パルスオキシメーター
2021 8 9 (art21-0361)
2019年の12月、肺血栓塞栓症で入院しました。その時、血液の酸素飽和度(SpO2, saturation of percutaneous ozygen)をモニターするため、パルスオキシメーター (pulse oximeter) を指先に装着しました。この機器は、直接、血液中の酸素分圧を測定するものではありませんが、測定した酸素飽和度から酸素分圧を推測することができます。酸素分圧と酸素飽和度の対応関係は、酸素解離曲線で表すことができます。若い人の酸素分圧は95mmHg程ですが、高齢者はすこし下がり80mmHg程だそうです。酸素飽和度では、それぞれ98%と95%になります。酸素分圧が60mmHg以下(酸素飽和度で90%以下)になると呼吸不全となり、各臓器が十分な酸素を受け取ることができないので、機能障害や損傷がおこり、危険な状態になります。そのため、酸素吸入が必要になります。
退院後も、酸素飽和度を起床時に測定しています。現在の凡夫の酸素飽和度は97%前後です。家内は99%です。凡夫の値が99%となることはありません。酸素飽和度は歳をとると低下すると言われていますから、こんなもんでしょうか。
肺血栓塞栓症に罹る前の値が分かれば、病気前後の比較ができるのですが、残念ながら前の値を測定していません。
肺血栓塞栓症で入院したときの酸素飽和度は、84%でした。息苦しさはほとんどなく一人で歩けたのですが、階段を上がろうとすると体が重く、だるく感じました。医者は、かなり危険な状態にあると言っていましたが、凡夫にはそうした感覚がありませんでした。酸素飽和度が90%以下になると、胸の痛みや息切れなどの低酸素血症(ハイポキシア)の症状が出ると言われています。
しかし、自覚症状は人それぞれです。富士登山を想起すればよくわかります。山頂では酸素飽和度が82.1±6.5% (n=26、関ら、川崎医療福祉会誌17:113, 2007) まで低下するそうですが、人によっては、息苦しくて会話もままならず、一歩一歩ゆっくりと足を運んでいる人もいれば、平地と同じように会話を楽しみながらスタスタ登っていく人もいます。かく言う凡夫は、前者の部類で、息苦しくて、少し歩いては休みすこし歩いては休みを繰り返しながら、どうにか山頂にたどり着きました。しかし、同伴した中学生の息子は、ひょいひょいと軽やかな足取りで登り、山頂で待っていました。
新型コロナウイルス感染から肺炎を引き起こし、酸素飽和度が80%前後になっても、息苦しいと感じない患者がいるそうです。酸素飽和度からみると低酸素血症のはずなのですが、自覚症状がない。これは、”幸せな低酸素血症”(ハッピーハイポキシア、happy hypoxia)と言われています。体が低酸素に順応している状態だと考えられます。かなり悪化しているのに自覚症状がない。おかしいと気づいたときには、手遅れになりかねないほど重症化しているとか。
この点は要注意です。新型コロナウイルスの感染者は、軽症(臨床ベット数の制約から中症もかな?)の場合自宅療養(経過観察)だそうですから、自宅療養中は身体の変化に注意を払う必要があります。この時、息苦しいとか体がだるいとかの自覚症状だけにたよるのは、危険が伴います。やはり、ここは、体温計やパルスオキシメーターを手元におき、体温、酸素飽和度、脈拍数を経時的に測定し、その変化に留意することです。変化があった時は、自覚症状の如何を問わず、速やかに医療機関にかかりましょう。なお、脈拍数については、低酸素状態がひどくなると、心臓が身体に多くの血液を送ろうとするため、脈拍数/心拍数が高くなります。富士登山の場合は、101.1±19.3bpmと報告されています。