本『リンゴが教えてくれたこと』
2021 9 30 (art21-0376)
先日、本棚を自作し、新書を並べました。その時、近いうちにもう一度読んでみようと何冊かの新書を抜き出しました。その中の一冊が、木村秋則著の『リンゴが教えてくれたこと』(日経出版社、2009年刊)です。一度は目を通している筈ですが、ほとんど記憶がありません。リンゴ農家の栽培体験談ですから、この数年、畑で野菜や果樹を栽培してる今の凡夫にとって身近な話であり、この度は、それなりの関心をもって再読?しました。木村秋則氏は、青森県の岩木町で、リンゴの自然栽培に成功した人です。10年近い試行錯誤の末、完全無農薬、無肥料のリンゴ栽培に成功しました。
成功のきっかけは、岩木山の中腹で、偶然出会ったリンゴの木だそうです。長い間人の手が入らない、放置された畑に植わっていたリンゴの木ですが、病害虫の被害もなく、見事な枝を張り、葉を茂らせていたそうです。自然の中では、そこの育つ樹木と同様に、リンゴの木がほとんど病気や害虫の被害にあうこともなく生育していることから、自然の生育環境を真似てやれば、リンゴも無農薬、無肥料で栽培できるだろうと考えたそうです。リンゴの木が植わっている土は、ふかふかで柔らかく湿り気のある土だったそうです。まさに山の土です。リンゴ畑の土をこのような土にするため、土の改良に取り組んだそうです。
広く行われている栽培方法である慣行栽培は、農薬を使い、肥料も使います。これに対し、自然栽培は、農薬を使わず、肥料も使いません。しかし、耕耘と草取りは行います。一方、無農薬、無肥料に加えて、無耕耘、無除草でおこなう栽培方法は、自然農法とか自然農(両者の間には、ちょっとした差があります)と呼ばれています。これは種を播くだけで、後は何もしない栽培方法です。
まとめると、以下の表になります。
自然を頭につける栽培方法(自然栽培、自然農、自然農法)は農薬も肥料もつかいませんから、自然環境で育った作物のもつ防御力と自然が与える生産力に頼ることになります。どちらも、作物を育てる土の力に依存しますから、土造りがキーになります。これまで、慣行栽培でやってきた田畑を、自然の土の状態に戻すには、数年かかります。また、自然農(法)と異なり、自然栽培は、何もしない栽培方法ではありませんから、地べたに這いつくばって行うような作業が不可欠で、手間暇のかかる、ある意味大変な、栽培方法のようです。
自然栽培は、凡夫のような、すぐにも収穫して食べたい家庭菜園者には、縁の無い栽培方法です。ただ、作ったものを家族が食べるのですから、できるだけ、農薬を使わないようにすることは、いつも心がけています。また、肥料は有機肥料を使っていますから、凡夫の現行の栽培は、分類上、有機栽培に入るようです。
ところで、この本には、”キュウリのつるが人の指に巻き付くこと” と ”ダイコンが時計回りに回転すること” が紹介されています。キュウリのつるの方は知っていましたが、ダイコンが回転することは知りませんでした。今年もダイコンを作りますから、回転するかどうか、観察してみようと思います。