今日も、"ようこそ"      

今日も、"ようこそ"

定年退職後、横浜市から湯梨浜町(鳥取県)に転居しました。 ここには、両親が建てた古い家が残っています。 徒歩5分で東郷池, 自転車15分で日本海です。 また、はわい温泉の温水が各家庭まで届き、自宅温泉を楽しめます。 ブログでも始めようかと、HPを立ち上げました。最近始めた木工工作と古くなった家のリフォームの様子を、田舎の日常に織り交ぜながら、お伝え出来ればと思います。

本『老人のための 残酷童話』

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本棚から、倉橋由美子著の本「老人のための 残酷童話」(講談社、2003年刊)を取り出して読み直しました。この本棚には、いつかもう一度読むであろう本をまとめて置いています。面白い本に出合う機会が少なくなった昨今、この本棚の本は貴重です。

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倉橋氏は、2005年に69歳で亡くなっていますから、これは、67歳の時の作品となります。タイトルを “老人のための”と修飾していますが、本人はまだ本格的な老を実感していなかったと思います。この本は、10編の童話?から構成されています。いずれも、奇想天外な話で、脳みその刺激とエキササイズにはうってつけです。

姥捨山は、棄老伝説に材をとった伝説ですが、難題型と枝折型に分類されるそうです (ウキぺディア)。この伝説、倉橋氏の手にかかるとどうなるか、“姥捨山異聞” でみることができます。

市原悦子のナレーションによる日本昔ばなしの中に、“うばすて山” と題する話があります。
ある村に暮らしていた一人息子と母親の話。息子は、国のお触れに従い、60歳になった母親を背負ってうばすて山に出かけたのだが、すて置くことが出来ず、連れ帰って、家の床下に隠し部屋をつくり、そこに母親を隠した。ある日、隣国が難題を提示し、これが解けなければ攻め入ると言ってきた。この難題を、母親が解き、攻撃を未然に防ぐことができた。しばらくして、また同じようなことが起こったが、母親の知恵で乗り切った。このことを知った国の殿様は、年老いた母親 (父親も含めて年寄り) をすてるというお触れを取り消すことにした。

次は、倉橋氏の “姥捨山異聞” です。
こちらは、ある山里に暮らす猟師を営む息子と母親、そして、息子の嫁の話ですが、かなりグロテスクな内容になっています。
初雪の朝、息子は、年老いた母親を背負って姥捨山にでかけて、1人で帰ってきた。息子の話では、姥捨山の山頂あたりに、捨てられた年寄りが穴や庵で生活している。彼らは死に切れなかった年寄りで、中には、鬼となって、他の年寄りを喰っているとか。
息子(夫)の体臭や挙動の異変に気づいた嫁は、姥捨山から帰ってきたのは息子ではなく、鬼となり、息子を喰い殺し、息子になりすましている母親(姑)であることを察知する。そして、息子になりすました母親(姑)の顔に斧を振り下ろした。頭が割れて、鮮紅色をしたザクロの顆粒のような脳が飛び散る。嫁は、飛び散った赤い顆粒を拾い集めては口に入れて貪り喰い、頭の中身も食い尽くす。そして、母親(姑)の死体を解体し、雪中に設けた食料保存庫に運び入れる。
鏡には若い鬼女の顔が映っている。そして、雪が溶けたら山に上って、生き残っている年寄りや鬼を食べてやろうと、鏡の中の自分に笑いかける。

猟奇趣味人が好みそうな話ですが、そうでない人にとっても、刺激になります。残忍でグロテスク、血生臭い話です。なにせ、タイトルは、”残酷” 童話ですから。タイトル負けしていません・・かな。

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