本「職務質問」
2022 1 20 (art22-0408)
職務質問とは、街頭などで、制服の警察官に声を掛けられて、アレコレ質問されることです。世の中には、職務質問を経験した人もいれば、経験したことのない人もいます。そして、「何度も声を掛けられるタイプの人間と、1度も声をかけられないタイプの人間がいる」ようです。凡夫は、これまでに3度、職務質問を受けていますが、家内は、1度もありません。凡夫の3度の職務質問は、1度目は横浜、2度目は京都、3度目は湯梨浜町です。所変わっても声を掛けられましたから、凡夫は、どうやら、何度も声を掛けられるタイプの人間のようです。警察官がどのような人に声を掛けるかは、全国共通の決まりごと、判断基準があることになります。どのような人に声をかけているのでしょうか。古野まほろ著の「職務質問」(新潮新書、2021年刊)を読んでみました。著者は、元警察官で警察庁の職務質問担当課で勤務したことがある作家です。
職務質問の法的根拠は、条文(明文)としては1つ(警察官職務執行法第2条)のみだそうです。しかし、裁判所の解釈が判例法として拘束力をもちますから、事細かい取り決めがあると言えます。
さて、その警職法第2条には、【警察官は、異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断して何らかの犯罪を犯し、若しくは犯そうとしていると疑うに足りる相当な理由のある者又は既に行われた犯罪について、若しくは犯罪が行われようとしていることについて知っていると認められる者を停止させて質問することができる】とあります。
職務質問の対象者は、
1.異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断して何らかの犯罪を犯し、若しくは犯そうとしていると疑うに足りる相当な理由のある者。
2.既に行われた犯罪について、若しくは犯罪が行われようとしていることについて知っていると認められる者、となります。
1は不審者、2は参考人、と通称されています。
凡夫のような者が職務質問を受ける理由は、不審者と判断されたことになります。それでは、なぜ不審者と判断されたのでしょうか。不審性は、(異常な挙動)と(周囲の事情)の掛け算から導きだされるものだそうです。ここでの異常な挙動とは、言語・動作・態度・着衣・携行品等が、通常ではなく、怪しい、不自然と思われることであり、周囲の事情とは、時間・場所・環境等です。
要するに、『どこか違う』、『いつもと違う』、『普段と違う』といった違和感です。しかし、警察官は、何らかの違和感を感知したら直ちに職務質問を行うと言ったものではなく、その違和感が、客観的、合理的なものであるかどうか、不審性として裁判所が納得するレベルのものであるかどうか検分するそうです。説明できるレベルの不審性があると判断できて、初めて、警察官は職務質問を行います。もっとも、この検分は経験知のなせる業で、一瞬なのですが。
3度職務質問を受けた凡夫は、どこかが違うのでしょう。残念ながら、本人にはどこが違うのか分かりません。
巷では、職務質問を受ける不審者の特徴などが囁かれています。曰く、ちぐはぐな服装や季節感のない服装、季節に合わない発汗、真夜中に歩いている、大きなバックをもっているなど。しかし、これらは、一般化できるものではないそうです。警察官は不審性を(異常な挙動)x(周囲の事情)で判断していますから、個々の特徴に注目している訳ではなく状況で判断していますから。同時に、その不審性の合理性をも検分しています。
凡夫のどこにそのような不審性を看取したのか、可能ならば、説明してもらいたいものです。
ところで、職務質問を受けた場合、アレコレ抗うのは、無駄なことになります。なぜならば、職務質問を行おうとした警察官は、不審者としての判断について、万全の下準備を済ませていることになりますから。職務質問を開始した警察官は、嫌疑ありとして検挙するか、嫌疑なしとしてご協力感謝します・さようなら、のどちかしかないので、嫌疑の有無を判定するまで、職務質問を諦めることはないそうです。
そうであれば、職務質問を受けた時、アレコレ抗っても埒があかないことになります。全面協力してサッサと済ませ、ご協力感謝します・さようなら、と言わせることがベストの対応のようです。もっとも、何か疚しいことがある場合は、そうもいかないでしょうが。