今日も、"ようこそ"      

今日も、"ようこそ"

定年退職後、横浜市から湯梨浜町(鳥取県)に転居しました。 ここには、両親が建てた古い家が残っています。 徒歩5分で東郷池, 自転車15分で日本海です。 また、はわい温泉の温水が各家庭まで届き、自宅温泉を楽しめます。 ブログでも始めようかと、HPを立ち上げました。最近始めた木工工作と古くなった家のリフォームの様子を、田舎の日常に織り交ぜながら、お伝え出来ればと思います。

本『ファスト教養』

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横浜に住んでいた時は、もっぱら、大型書店や専門書店で本を購入していました。書店で、アレコレと立ち読みしながら本を物色することは楽しいことです。いろいろな本に出会います。思いもしなかった本などを買ったりすることもあります。半日もウロウロしていると、腰が痛くなりますから、フロアの片隅に控えている椅子に体をあずけて小休止します。立ち上がって、再び、書籍棚の迷路の人となります。
しかし、ここ湯梨浜町に移住してから、書店で本を漁る楽しみはなくなりました。書店は数軒ありますが、本の数が少なく、また、どの書店でも同じ本が置かれているので、時間をかけて探すまでもありません。次第に、書店への足は遠のき、今では何か別の用事で出かけたついでに立ち寄るだけになりました。

本の購入は、もっぱら、通販になりました。しかし、通販では、メディアで紹介された本を買うことになりかねず、書店巡りのような、偶発的で個別的な本との出会いがありませんから、ある意味つまらない購読術です。さらに、買ってまで読みたいと思える本を知る術もなく、通販で本を買うことも少なくなりました。幸い、過去数十年間、いつかもう一度読もうと思った本を棚に並べてきましたから、今では、それを取り出しては読んでいます。中には何回も読んでいる本もあります。

さて、レジー著の「ファスト教養」(集英社新書、2022年刊)です。副題は「10分で答えが欲しい人たち」です。新聞広告をみて、通販で手に入れて読みました。久しぶりの購入で、1,056円(税込み)でした。

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以下は、ファスト教養の有様に関する抜粋です。
  • 特定のテーマを深く掘り下げるのではなく「何となく役にたちそうな話について」「大雑把に理解する」ことを「身につけておくべき教養」として重視する姿勢は、「教養」と「ビジネス(パースン)」が結び付く場面において頻繁に登場する価値観となっている。
  • ビジネスシーンで使える「話を合わせるのに最適なネタ」をクイックに仕入れて、「うまく立ち回る」ことによってお金を稼ぐ。そのためのツールとして最適なのが教養である、といった風潮。
  • 教養を「ビジネスシーンですぐに役立つツール=ファスト教養」として捉え返す風潮の背景にあるのは、「時代が変化する中で生き残らなければならない」というビジネスパースンの焦燥感である。
昨今のビジネスパースンは大変です。
本は、オーディオブックを2,3倍速で聴く、あるいは、代行サービスを利用する。これは、自分の代わりに本を読んで、要点をまてめてくれるサービス。かくして、短時間で、多数の本を ”読む?”。
同様に、映画も、2,3倍速で観る、あるいは、ファスト映画を利用する。これは、映画全体のストーリーがわかるように10分程度にまとめた動画である。かくして、短時間で、多数の映画を ”観る?”。
(音楽はどうなのでしょう。これも、2,3倍速で聴いているのかな)

こうしたやり方で、多数の本や映画を読んだり観たりすることが、コスパがよいとみなされているようですが、凡夫には、逆に、コスパが悪いように思えます。多くの本を読めば、あるいは、多くの映画を観れば、知識は増えこそしますが、身につくと言ったものではないでしょうから。ましてや、ダイジェストや短時間で読んだり観たりではなおさらです。たとえ、数冊の本でも、数本の映画でも、時間をかけて読み、時間をかけて観る方が、よっぽど、身になると思います。また、同じ本や映画を何度も読んだり観たりすることで、心中深く、人としての立ち位置が微妙に動かされていることがあります。

ところで、凡夫は一読500円とみています。この本は、いつかもう一度読みたいと思いませんでしたから、定価1,056円は高すぎます。


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