今日も、"ようこそ"      

今日も、"ようこそ"

定年退職後、横浜市から湯梨浜町(鳥取県)に転居しました。 ここには、両親が建てた古い家が残っています。 徒歩5分で東郷池, 自転車15分で日本海です。 また、はわい温泉の温水が各家庭まで届き、自宅温泉を楽しめます。 ブログでも始めようかと、HPを立ち上げました。最近始めた木工工作と古くなった家のリフォームの様子を、田舎の日常に織り交ぜながら、お伝え出来ればと思います。

本『狭小邸宅』

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新庄耕の『狭小邸宅』(集英社、2013年刊)を読みました。
不動産会社に就職した若者が家を売る話です。販売ノルマに厳しい、売ってなんぼの業界で、売ることができない新人のもがきと奮闘です。狭小邸宅は、20坪程度の狭小地に建っている3階建ての住宅です。鉛筆のように細長いので、ペンシルハウスとも言われています。都市部の利便性のよいエリア(その分地価が高い)の、庶民?でも手の届く価格帯の戸建ての家です。

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家を売るには策略があるそうです。この小説の後半に、40歳半ばの半田さん夫婦に、世田谷の家 (7,580万円)を売った話がでてきます。半田さん夫婦は家探しは初めてで、予算は7,500万円でした。要望は、城南エリアの家で、利便性、広さ、環境です。

本命の物件(世田谷の家)に案内する前に、“まわし”の物件をいくつか案内します。これは引き立て役の物件で、要望のいくつかを再考させて、諦めさせるように仕組んでいます。要望の潰しです。
下のリストの5が売りたい家で、これが本命の物件です。この物件を売るために、1から4の"まわし"物件を順に案内することで、要望の一つの利便性を諦めるように仕向けていきます。

  1. 三軒茶屋駅から徒歩5分の3階建てのペンシルハウス(6,500万円)
    利便性をとると、広さや日当たりが望めない。
  2. 分譲中の土地、台形の不整形地や旗型の土地(5000万円前後)
    売れ残っている土地や利便性のよい所の土地は不整形である。
  3. 東が丘の2階建ての3LDK
    閑静な住宅地にあるが、駅から19分と遠い。
  4. 用賀の2階建て3LDK(8,589万円)
    日当たり良好。用賀駅から徒歩7分。価格が予算オーバー
  5. 世田谷の桜新町の2階建て3LDK(7,580万円)
    日当たりよし。駅徒歩15分とちょっと遠い。
また、”かまし”があります。
4の家を案内して、7,500万円では希望する家は無理かなーと思い始めた時、かましをいれます。 小説では、電話を受けたように見せかけて、「2週間前に完売した物件が、ローンキャンセルで再販売になった」と、伝えます。さらに「急ぎましょう。他の営業マンにも連絡がいっているはずだ」と言って、現地へ向かいますが、その道中、物件の概要を説明して、購入意欲を煽っています。
5の家(本命の物件)を案内して、半田さん夫婦の反応を見ながら、「城南じゅうの営業マンがこの一件のために客をつけようとしています。物件発表後は早い者勝ちです」とか言って、契約を急がせます。半田さん夫婦は、興奮し、平静さを失って、早々に契約に応じます。

この小説を読んで、一つ思い出しました。
定年退職後、京大医学部で研究を続けるため、横浜から京都へ移住しました。家内と2人で部屋を探しました。要望は、近くで、広い部屋、10万円以下の家賃でした。不動産の人に、医学部近くの賃貸物件をあれこれ案内していただいたのですが、どれも、いまいち気に入りませんでした。これが最後の物件ですよと、案内された物件がありました。ただ、そこは、北部キャンパスの東側で、医学部キャンパスからかなり離れていました。また、家賃は10万円を越えていました。しかし、そこに決めました。広くて環境がよかったのです。

そこから毎日、徒歩で、本部キャンパスを突っ切って研究室へ通いましたが、それはそれで楽しいことでした。


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