果樹栽培と農薬散布
2021 10 04 (art21-0377)
このところの好天で、柿の果実が緑色から薄黄色に変わってきました。柿は、生食用甘柿の次郎と干し柿用渋柿の平核無です。今年は、8月下旬に予定していた農薬散布を止めましたから、6月と8月初旬の2回しか農薬を散布していません。そのせいか、柿の葉はかなり虫に食い荒らされています。多くは、夏に発生したコガネムシとイラガによるものです。コガネムシは見かけなくなりましたが、イラガは、まだ、時々見かけます。葉がボロボロになっていますが、数週間後に控えた収穫まで無事に育ってくれることを、願っています。このあたりの農家は、出荷用のナシを栽培しています。栽培作業のなかで農薬散布がきついとの声を聞きます。4月から8月まで、月に3回農薬を散布するそうです。山腹の傾斜地で栽培している農家が多く、動墳機械スプレーヤーが使えず、農薬散布は手作業です。防護服に身を包み、長いホースを引きずって、ウロウロすることになりますから、夏場は、汗でびっしょりになるそうです。そうした作業を何回も繰りかえすことで、病斑や虫食いのない “きれいなナシ” がとれるのです。ナシだけでなく、果樹の栽培とは、そうしたものでしょう。
凡夫はプルーンを栽培していますが、病害虫によって半分以上の果実はダメになります。自家食用プルーンですから、なるべく農薬をかけたくありません。年に2,3回、病害虫の発生時期にあわせて散布するだけにしています。プルーンの産地の防除暦を見ると、5月から8月まで、月3回、総計で殺菌剤11回、殺虫剤13回の農薬散布を行っています。凡夫の作ったプルーンは、虫食いや引っかきによる変形や傷痕が多くみられますが、店頭で販売されているプルーンは、“きれいなプルーン” です。まさに、この見た目の “きれいさ” は、農薬による殺虫、殺菌のなせるところです。
ところで、前回のブログで、木村秋則のリンゴの自然栽培(無農薬、無肥料)を取り上げました(art21-0376)。そもそも、木村氏が慣行栽培から自然栽培へ移行した理由の一つに、農薬散布の作業のつらさがあったそうです。病害虫の防除のため、手作業で農薬を散布していた木村氏夫婦は、農薬接触による皮膚炎に苦しんだそうです。当時使用されていた農薬の一部は、その後、皮膚の傷害や発がんのリスクから、使用禁止になっているそうですが、使用禁止になるまで農家の人は使い続けたとか。よくある話です。
果樹栽培は農薬が無くては成立しません。消費者が求める、病斑や虫食い痕一つ無い、“きれいな果実” を生産するために、農家の人は農薬を果樹に、そして自分にも、かけまくることになります。
庭のギンモクセイの花が、このところ、甘い芳香を放っています。