干し柿、粉ふき
2021 11 25 (art21-0392)
寒くなってきました。身体が寒さに慣れていないこの時期は、寒さがこたえます。古い日本家屋は、空気の流れを遮断する構造になっていないため、一度外の冷気が屋内に入ると家の奥まで侵入します。特に、廊下が、空気の通り道になるため、冷えます。外廊下(縁側廊下)の冷えは、その廊下を使わないようにすれば済みますが、内廊下の冷えは、そうはいきません。寝室に使っている部屋から、夜中に、トイレへ行こうと内廊下に出ると、一気に体が冷えます。足早に進んで用をたしますが、すっかり、体は冷えてしまいます。
このところの寒さは身体には困ったものですが、干し柿作りには願ったりでした。今年も、柿の木(渋柿:平核無)が沢山の実をつました。例年通り、家内と収穫してはせっせと皮を剥いて軒先に吊るしました。今年は、里帰り出産で帰省していた娘も手伝ってくれました。
寒い晴れの日がつづき、柿がよく乾燥しました。表面がしっかり乾いた頃から、柿を手で揉みました。揉むことで、内部の果肉が練られて、渋が早く抜けると言われています。
手揉みと脱渋の関係は、河口浩ら (2012年、愛媛大農場報告 34:11-16) の報告にみることができます。渋柿品種の愛宕と富士の皮を剥いて、屋根の軒先に吊るし、毎日夕方、20回均等な力で手揉みを行い、タンニンとエタノール含量を測定したそうです。(柿の渋が抜けるのは、アルコール由来のアセトアルデヒドがタンニンを重合させ、不溶化するからです。不溶性タンニンは、舌の苦み感覚を刺激しません。art18-0072)。実験結果から、手揉みが、果肉内部でのエタノ ール生成を促し、可溶性タンニン含量を減少させていることがわかります。これは、手揉みが、エタノール処理による渋柿の脱渋と同じ機構で、柿の渋抜きを行っていることを示唆します。また、手揉みを行えば、可溶性タンニンが早く不溶化し渋が抜けるので、干し柿が早く仕上がることになります。
ところで、干し柿の表面には白い粉が吹き出ているものですが、今年の干し柿は、例年以上に、白い粉がたくさん吹きました。これも、手揉みの効果の一つと考えられます。
白い粉は、ブドウ糖(グルコース)の結晶です。渋柿にはショ糖(スクロース)がたくさん含まれています。柿を干すことで、このショ糖がインベルターゼという酵素によって加水分解され、ブドウ糖と果糖になります。柿を手で揉むと、表面の被膜からブドウ糖を含む水分が染み出てきます。水が蒸発してブドウ糖が濃縮され結晶を作ります。これが、白い粉状にみえます。このように、柿を揉むことが粉吹きを促進します。
今年は、せっせと、手揉みを行いましたから、見事に、白い粉を吹いてくれました。